青の秘密を忘れない
自分がまさか不倫をするだなんて思っていなかった。

頭の中で「不倫」という言葉で関係を表しても、自分でもピンと来なかった。

もっと不倫ってどす黒い感情で、色欲にまみれた汚い関係だと思っていた。
いや、青井君と気持ちを通じた今もなお、心のどこかではそう思っている。

公の関係になるまで体の関係は持たないと心に決めて、その言葉に当てはめることは避けたかった。


夫は悪い人じゃない。
私を愛してくれている。
でも、数年前に付き合うことになった時、私は夫を「選んだ」。
今までの「落ちた」という感覚と違うのは、恋愛は結婚と違うからだと思っていた。

でも、恋愛と結婚が本当に別ならば、私はなぜ二度と恋愛はしないと思い込んだのだろう。


もっと早く出会っていれば……いや、彼と六歳差ある。大学すら被らない。
この出会いを待っていれば……でも、あの時私は自分は適齢期だと思っていた。

こんな出会いがあると知っていたら……、
そういくら悔いても仕方ないことは分かっていた。

私の携帯電話が震えて、
「やったー!会いたいです!
明後日はどうですか?」
という文字が表示されて数秒で消えた。

私は、夫がこちらを向いていないことを確認して「明後日大丈夫だよ」と打って、青井君からのメッセージ通知を非表示設定に変えた。

絶対にばれてはいけない。
その時が来るまでは。
< 18 / 60 >

この作品をシェア

pagetop