青の秘密を忘れない
第6章 初めての秘密のデート
待ち合わせって、なんでこんなにドキドキするのだろう。

お互いの最寄り駅から少し遠い大きい駅で待ち合わせすることにした。
ふらふら歩くのでなければ、あえて都会に行って人ごみに紛れた方が知り合いに会わないだろうと話し合った。

昨日、着ていく服がないと慌てて、ワンピースを買いに出かけた。
私は携帯電話の手鏡モードでメイクを確かめる。
不安そうな、でも楽しそうでもある自分の顔が映る。
そして、ブルーサファイアのネックレスも。

ドキドキする……。

今まで毎日のように会っていたのに、いざ改まって会うのは不思議な気分だった。

「お待たせしました」

その声で顔を上げると、青井君が私を覗き込んでいた。
白いTシャツの上に紺色のカーディガンを着て、黒いスキニーを履いていた。
初めて見る私服で、プライベートな時間であることを意識する。

「スーツ以外、初めて見た」

青井君が自分の格好を確認して、照れ笑いを浮かべた。

「篠宮さんとの初デートなんで、何着ようか悩みました」

そっか、これってデートだ。
デート、という言葉にドキッとする。

「……変ですか?」

「ううん。……いつもより格好よく見える」

青井君は「やった」と笑って、自然に私の右手を握った。
私の方が年上なのに余裕がない気がした。
ドキドキしているのを悟られないようにするのが精いっぱいだった。

「篠宮さんも、今日いつもよりかわいいです。
その服もかわいいし、化粧もいつもと違うし、そのネックレスも似合う」

「ありがと」

少し意地悪な笑みを浮かべて私の顔を覗き込んでくる。

「僕と会うため、ですよね。嬉しいな」

「……いつもの青井君じゃない」

私が少し力ない声でもにょもにょとそう言うと、青井君は繋いだ手を自分の方にぐっと引き寄せた。

「そりゃ、好きな人とデートしてるんだからそうでしょ」

そして、私の頭を優しくポンとたたいた。
今までの先輩後輩の関係では考えられないなと思って、思わず吹き出した。

「ほら、早速行きますよ!せっかくの初デートなんですから」

「うん!」

私たちは他の道ゆくカップルと同じように見えているだろうか。
姉と弟とか……人妻と愛人とか、そんな風に見えてはいないだろうか。
不安になって青井君の手をぎゅっと握ると、知ってか知らずかもっと強い力で包まれて不安はどこかに飛んでいった。
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