エリート御曹司と愛され束縛同居
「……迷惑かけてごめんね」

向かい側に腰を下ろした幼馴染みに謝罪を告げる。

圭太は窮地の時を察していつも自然に助けてくれる。

「なんで澪が謝るの? 凪さんから大体の話は聞いたよ。おびただしい着信にすごい剣幕で怒鳴られてびっくりしたけど、大方それで落ち込んで悩んでたところにあの令嬢に乗りこまれたって状況だろ?」

わざと軽い調子で話してくれる圭太に小さく頷いて、兄の言いがかりに巻き込んでしまった旨を再び謝った。

兄の性格を熟知している圭太は逆に慰めてくれる。

「アメリカに赴任する前は俺も植戸様に関わっていたからあのお嬢様に面識はあるけどまさかこんな手段に出るとは予想外だったな」

「……桃子さんは遥さんが好きなのよ」

ポツリと言葉が零れる。

「自分の理想通りの男性が好きなだけだろ。物語の王子様に恋をするというか、完全に先輩を美化してるだけだと思うけど?」

「……それは……そうかもしれないけど」

桃子さんの話に感じたほんの少しの違和感はそれだった。

遥さんは王子様ではないし、その仮面を好ましいものとは思っていない。

「その時点であの人は選ばれないんだし、気にする必要ないんだって」

「どうしてあの場所に私たちがいるってわかったの?」

「帰国して確認したい案件があったから本社に寄ったら、ご令嬢を見かけたって聞かされてさ。でも誰も面会していなくておかしいと思っていたら澪に連絡がつかなくて、秘書課に確認すると退社したって言われるし、嫌な予感がしてさ」
< 148 / 199 >

この作品をシェア

pagetop