初夜から始まる夫婦事情~一途な次期社長の溺愛は鎮まらない~

「エスカレートするようなら俺から注意してもいいけど、今のところはそこまででもないからな」

「様子を見るしかないか」

香子に好意を持っている男が側にいると思うと落ち着かないが、まだ何も起きていない中、過度に警戒するわけにもいかない。相手は自社の社員でもあるのだから。

新入社員の態度も問題がありそうだが、指導員はあくまで香子だ。
相談されない限りは任せるしかない。


すっきりしない気持ちのまま、渇いた喉にアルコールを流し込む。

真田もグラスを傾けていたが、しばらくすると揶揄うように笑った。

「……なんだ?」

「眉間にシワが寄ってるぞ。政略結婚の割に気持ちが入っていそうだな」

答える気にならずに、ふいと視線を逸らす。しかし追及は止まなかった。

「不機嫌な顔して……そんなに心配なら彼女に直接言えばいいだろ? 他の男と仲良くしないでくれって」

「言える訳ないだろ?」

香子の自由を奪いたくないし、そんな器の小さな男と思われたくない。

「女は適度な嫉妬は喜ぶぞ?」

「香子は当てはまらない。俺がそんな台詞を吐いたら、真面目に受け止めて仕事に支障が出るかもしれない」

「ああ、それはあるかもな」

真田は上司だけあって、香子の性格をそれなりに理解している。

「退職の日までは悔いのないように仕事をして欲しいんだ」

「随分優しいんだな。お前がそんな発言するなんてな」

「からかうな」

「からかってないだろ? とにかくしばらくは柊哉が嫉妬に耐えて頑張るしかないな」

明らかに楽しんでいる真田を軽く睨み、お代わりをオーダーする。

直ぐに届いたそれで喉を潤す。

しばらく会話せずに軽食を口にしていると、真田が笑みを引っ込め真面目な表情になった。

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