【放浪恋愛】まりなの日記

【だから何でアタシに求めて来るわけなのよ!?】

京都祇園の中心地の交差点で軽ワゴン車が暴走して歩行者7~8人が死傷した事故は、事故を起こしたダンナが亡くなったために京都地検に書類送検と言う形で幕引きとなった…

そういうことで、虫ケラの家のモンは、交通事故の翌日から地獄の日々に変わってもうたと言うことや…

被害者遺族のみなさまに支払う損害賠償の問題とあわせて、亡くなったダンナがコキャクから預かった大金を会社に入れずに、オチャヤアソビに使い込んでいたことなどが発覚したけん、虫ケラの家はテイトウ物件になってしもたねん…

当然のごとく、小娘夫婦は住む家がのうなったけん、宝塚市旭町にあるムコはん方の家へ転がりこんだ…

せやけど、ムコはん方の家は実家天国と化していたけん、小娘は落ち着かんと言よったわ…

交通事故を境にして、小娘のムコはんは会社からイギリス栄転を取り消された…

ほんで大阪の支店に左遷、または奈良市内にある取引先の金物屋さんへ出向、または追い出し部屋へ移るのか…3つのうちからひとつを選べと上のモンから言われた…

ムコはんはこの時、会社をやめようかと思ってはったけど、他にやりたい仕事も変わりたい事業所がないし、家族にメーワクがかかるけんと言うことで大阪へ転勤することを受け入れた…

ムコはんは、実家から阪急宝塚線の電車に揺られて遠距離通勤となった…

それまでは、自宅から職場までの距離は歩いて10分前後やったから、楽やった…

けど、満員電車に揺られて宝塚から大阪まで行くことに変わったけん、ムコはんは『しんどいねん、つらいねん…』とつぶやいてはった…

その上にまた、実家では頭の痛い問題をたくさん抱えてはったので、ムコはんは家庭の人間関係で深い悩みを抱え込んでしもたねん…

ムコはんの一番上のお兄は、家族5人で唐桑(からくわ・宮城県気仙沼市)で暮らしてはったけど、東日本大震災の巨大津波で家が焼かれた上に、勤めていた製麺工場が流されて、失業したそのまた上に、嫁さんのパート先のスーパーストアが巨大津波で店舗が壊滅的な被害を受けたけん、一時帰休となった…けん、妻子を連れて宝塚の実家に緊急帰省をしてはったが、新しい就職先が見つからない状況になっていたし、子供たちも転校先の学校に行けんなったけんに不登校の状態になってもうた…

二番目のお兄の家族は、震災発生の次の日に発生した原発事故で、放射能汚染がよりひどくなったけん、大熊(福島県)で暮らすことができんなった…

『町が高濃度の放射能による汚染地獄と化したけん、大熊に帰らへん…生きる気力をなくした…』と言うて、シューカツせずにだらけてもうたけん、妻子は二番目のお兄すてて、五條(奈良県)の(農家の大家族の)実家へいんでしもた…

さらにそのまた上に、下の弟たち3人がムコ養子先の家でシュウトがはぐいたらしいと言うて出戻ってはったし、末の弟は大学院を卒業後、人材派遣会社を通じて事務の仕事をサボりぐせが原因で職場放棄をしてやめたあと実家へ出戻っていた…

せやけん、家庭内は深刻な状況におちいっていたねん…

この日の明け方7時頃のことやった…

アタシはセブンイレブンのバイトを終えて、眠い体のまま楠町(くすのきまち)のアパートへ帰る途中の東遊園地で虫ケラの小娘と会った…

小娘はアタシに会うなり『お願い、助けてよぉ…』と泣きながら言うてきたけん、ケンカになってもうたわ…

「この前の交通事故で、ダンナはイギリス栄転を取り消されてサセンのそのまた上に、ダンナのきょうだいのニートや出戻りの問題でどないしてええのか分からへんけん助けてほしいと言うてはるけど…アタシにどないしてほしいと言うねん!?」
「まりなさん…アタシは今すごくつらい思いをしているのです。父が起こした交通死亡事故で、宝塚の実家の家族からもイヤミを言われ続けているのです…アタシは耐えられないから、あの家を出たい…まりなさん…お願い…助けてください!!」
「そんなん知らんわ!!…あんたはアタシにどないしてほしいのよ!?カネが欲しいの!?それとも、アタシが暮らしてはるアパートにおらせてと言いたいのかしら!!」
「まりなさん…アタシはダンナの実家にはいたくないのよ!!アタシはダンナの実家から出て行きたいのよ!!」
「はぐいたらしいわねあんたは!!」
「まりなさん!!アタシはまりなさんしか頼れる人がいないのよ!!アタシが困っているのに、どうしてそんなに冷たくするのですか!?」
「やかましいわね虫ケラのストーカー娘!!あんたのクソッタレオヤジにグーで思い切り顔をどつかれたけん、今でもアタシの心は傷ついたままやねん!!今でもアタシは、あんたのクソッタレオヤジはこらえへんと怒ってはるのよ!!あんたね、この前も言うたけど、あんたは世間の世知辛さを知らずに、安全な方ばかり…ううん、あんたの場合は優しい方ばかりを選んだけん大失敗をこうむってしもたんよ!!優しくしてくれる人がいなくなったらどうするのだと親から言われて、親の言いなりになって優しい方ばかりに逃げていたけん、こないになったんでしょ!!アタシは見たくない部分ばかりを見て生きてきた女なのよ!!あんたね!!アタシの話を聞いてんの!?」
「まりなさん!!まりなさんはどうなさるおつもりするなのですか!?まさか…貯蓄ができたらまたよその街に行かれると言うのですか!?」
「ええ!!その通りよ!!アタシは貯蓄がでけたら、また知らない街に行くことにしとるけん!!」
「それじゃあ、まりなさんはアタシのことを助けることができないと言いたいわけなのですか!?」
「そんなん決まってはるでしょ!!あんたね!!ダンナの実家の両親からイヤミを言われたぐらいで何を甘ったれとんかしら!!アタシはね!!4へんも結婚生活が破綻したその上に、男とトラブった回数もぎょーさん抱えてはるのよ!!その度に男たちからきついはずかしめを受けたわ…恥ずかしくて恥ずかしくて…死にたい気持ちでいっぱいになってはる中で生きていたのよ!!あんたなんかにやさぐれ女のアタシの気持ちなんか分かってたまるか!!あんたね!!自分の意思をもっと強く持ちなさいよ!!自分が選んだダンナでしょ!!そないに思うんやったら、ダンナの実家のモンから言われたイヤミを聞き流しなさいよ!!それもでけんのかしら!?いくらアタシが言うても、あんたはドアホやけん、逃げることしか頭にないんよ!!アタシはね!!そなな弱虫なんぞ助けへんけん!!帰んなさいよ!!」

アタシは、小娘にきつい言葉をぶつけたあとその場から立ち去りました。

小娘は、その場にしゃがみこんでメソメソメソメソメソメソ泣きよったわ…
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