trick or treat ?
柚木(ゆずき) 里奈(りな)、26歳。
職業、営業事務。

(けん)ちゃん、かっしー、おはよう。trick or treat。」

「うわぁ…ハロウィンで浮かれたバカ発見。」

会社に着き、剣ちゃんこと剣崎(けんざき)君とかっしーこと鹿島(かしま)君を見つけてハロウィンのお約束な挨拶すると、2人は冷ややかな目で私を見てきた。

剣ちゃんとかっしーとは会社の同期で、まぁ私が女性として見られてないというのもあるが、男女の友情が成立するほどウマが合う。

「大体、trick or treatって子供が言うセリフだろ?」

かっしーは鼻で笑いながら私に向かって話す。

「いいじゃんいいじゃん。私だって気持ちはまだ10代なんだから。」

「はいはい。ほら、飴ちゃんあげるから早く仕事しろ。」

剣ちゃんは呆れ笑いをしながら、ポケットから飴を取り出し私にくれた。

「えー、レモン味?」

「贅沢言うな。」

3人で立ち話をしていると、後ろから男性が来て、剣ちゃんとかっしーの間から手を伸ばし2人の頭に乗せ、ガシッと掴んできた。

「朝から仲が良いな。でもそろそろ仕事の時間だぞ。」

「あっ森島(もりしま)先輩。おはようございます。」

森島(もりしま) 祐希(ゆうき)、剣ちゃんとかっしーと同じ営業一課の先輩。いつでも爽やか好青年って感じの人。

そして…私の憧れの人。

「じゃあな、柚木。」

剣ちゃんとかっしーは森島先輩と話をしながらその場を去った。

「いいなぁ、2人とも。私も森島先輩と話がしたいな。」

森島先輩の後ろ姿を眺めながら、私はそっと呟いた。

< 2 / 5 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop