trick or treat ?
勤務終わりの時間が近づいてきて、私はすっかり帰るモードになっている。

今日は仕事帰りに剣ちゃん&かっしーと飲みに行く約束をしていた。私の頭の中には何飲もうかな〜っという事でいっぱいだ。

「ごめん、誰か残業出来ないかな?」

課長が営業事務の女子社員に声をかける。好き好んで残業したくない女性陣は、一斉に課長から視線を逸らす。

「課長、柚木さんが残業やってくれるそうですよ。」

何故か、突然かっしーがとんでもない発言をする。

「ちょっ、ちょっと何言い出すのよ!」

私が慌ててかっしーの発言を否定しようとした時、今度は剣ちゃんがヒソヒソと私に話しかけてきた。

「おい、森島先輩と残業だぞ。いいのか?」

私はボーっとしていて課長の話もあまり頭に入ってなかったが、残業は森島先輩と一緒らしい。

「えっ本当?でも、飲みに行く約束…。」

「酒ならいつでも飲める。先輩との距離を縮めるチャンスだぞ?」

「そ、そうだね。…はい。柚木、残業しまぁす。」

「そうか。助かるよ、柚木さん。じゃあ悪いけど、森島の仕事のサポートよろしく。」

森島先輩との残業が確定した。剣ちゃんとかっしーは親指を立てて『頑張れ』と口パクで激励する。私も親指を立てて『ありがとう』と口パクで返した。

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