幼馴染でストーカーな彼と結婚したら。

「最初は大事に大事にしようって、何万回も心の中でシミュレーションしてたのに……失敗しました。理性をもう少し鍛えておかないと……。本当にすみません」
「勝手にシミュレーションしないでよ。しかも何万回もって! なんかすっごくイヤ!」

 やっぱり健一郎は健一郎だ。
 何万回、という表現も、『誇張』ではなくて『事実』のようで怖い。

 すると、健一郎が私の身体をまたギュウと抱きしめる。そして小さく息を吐いた。
「はぁ……全部ここで幸せを使ってしまったんじゃないかって、怖いです」
「大丈夫よ。使った分だけまた幸せって増えるものだから」
 そういうと健一郎が目を開いて、驚いたように私を見ている。

(なにか変なこと言った……?)
 私は健一郎を見て、眉を寄せた。

「なによ?」
「三波さんらしいです。あ、じゃあ、部屋にあった三波さんの写真、もう一度貼ってもいいですか」
「それはだめ」
「うぅ……」

(っていうか、何で健一郎の幸せ=私の写真なのよ! おかしいでしょうが!)

 そう。昨日の夜、落ち着かないからと、健一郎に『待て』をかけて、部屋の写真を全部はがしてもらったのだ。
 写真が非常に増えていたし、以前消したはずの写真があって驚愕したのだけど、もう見なかったことにした。

「そもそも写真なんて必要? 毎日一緒にいるのに」

 健一郎はいつだって、私の写真を見てデレデレしている。私の前でだってそうだ。

(目の前に本物がいますけど!?)

 そんな風に写真の中の自分にまで嫉妬しそうだなんて、もう完璧にどこかおかしい。

「ちゃんと責任とってよ」
 私は思わずつぶやいた。

 健一郎は、「えっと……それはこれから毎日、こういうことをしてもいいと取ってもよいということでしょうか」と何か間違った解釈をしている。

(ちがうに決まってるでしょうが!)

 とっさにそう言おうとしたものの、勘違いを現実にしようとする健一郎のキスに、言葉を阻まれることとなった。
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