幼馴染でストーカーな彼と結婚したら。

―――夜半。
 ベッドの中で、健一郎が私の髪をなでる感触がして、私はそっと目を開けた。
 目の前で健一郎が笑う。その吐息にもほっとしている自分がいた。

「起こしてしまいましたか、すみません」
「ねぇ、どうしていつも寝てないの。さすがにおじさんになってきてるし、体力持たないよ」
「おじさんって……」

 健一郎がショックそうな顔をして、私は思わず笑う。
 健一郎といると、いつまでも飽きない。私はいつだって、心から呆れたり、心がぎゅっとなったり、愛おしいって思ったりするんだ。

 健一郎は、そんな私の顔を大切そうに見つめた後、
「あの……、一つだけお願いがあります」
 口を開いた。

「なに?」
「藤森には僕がたっぷりお仕置きをしておきますから。真壁くんにはきちんと話をして下さい。ちゃんとふられないと彼も前に進めないでしょ」
「ふ、ふられるって」

 当たり前だけど、振られる前提だ。
 私はじっと健一郎を見ると、
「健一郎さ、真壁くんと私がどうにかなるかもって、そういう不安ないの」
 思わず口をついて出てしまった。

 あり得ないことだけど、そこは少し気になる。
 私はいつだって不安がある。この差はなんだろうか。

「まぁ、二人で楽しそうにしてたら嫌な気持ちはありますけど。でも、三波さんのおかげで、少し自信が出てきました」
 健一郎がにこりと笑う。「三波さん、なんだかんだ、僕のこと好きですよね」

 そう言われて、私は思わず顔をしかめた。

(そうなんだけど……そうなんだけど……!)

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