きみはハリネズミ
翌朝、学校に行くと私の机と教科書が無くなっていた。



校内を探し回ってやっと部室棟の側で見つけた机には『尻軽女』とマジックペンで書かれていた。



優里香は涙を飲み込んで机を拭く私に、『自業自得』と小さく呟いた。



その日以来、優里香とは話していない。


違う高校に進学して、連絡も途絶えた。


西野は、お互い意識していたけれど最後まで想いを打ち明けることもなく、私の初恋はあまりにもあっけなく散った。


涙も出なかった。


恋というものは大切にしてきたものを壊してしまうことがあって、


真実は人を傷つけてしまうこともあるのだと、


そう割り切れることができないほど、私は未熟で幼かった。



一緒に笑った思い出も、一緒に泣いた思い出も、全部消えてしまうなら初めから無ければいい。



もう、大好きな人を傷つけたくない。



傷つきたくない。



だったら、人と関わらなければいい。



笑って誤魔化して距離を取れば、きっとうまく泳いでいける。



大好きだった親友は、もういないんだ。



そう言い聞かせれば、また不格好でも笑える気がした。
< 32 / 73 >

この作品をシェア

pagetop