無邪気な彼女の恋模様
ふいに、さっき助けてもらったときの波多野さんの言葉を思い出す。

───何かよくメールもしてるみたいですけど、俺のなんでそういうのやめてもらっていいですかねー?

そうだ、”俺の”って言ってた。
俺の…?

私は声が震えそうになるのを抑えながら、恐る恐る聞く。

「波多野さん、もしかしてそれ、告白だったりします…?」

私の言葉に、波多野さんは見たこともないような照れた顔になった。
そんな表情にもドキリと鼓動が脈打つ。

「付き合うなら木村より俺の方がいいんだろ?ま、だいぶおじさんだけどな。」

ぶっきらぼうに言うけどやっぱりそれはとても優しくて甘くて。
私の目からは自然と涙がポロポロとこぼれ落ちていた。

「ちょっ、何だよ。」

私の涙に、波多野さんは焦りながらハンカチを取り出して優しく拭ってくれる。
もう、本当に本当に波多野さんったら優しい。

「もうっ、波多野さん分かりづらいよー。」

私も照れ隠しに、嫌みを言いながら波多野さんをバシバシと叩いた。

「嫌だったか?」

伺うように聞いてくるので、私は慌てて頭をフルフルと振った。

「嬉しいです。だって私、ずっと波多野さんのこと…うわーん。」

感極まって、堰を切ったように涙が溢れてくる。
ずっと好きだった。
でも一線を引いていた。
叶わない恋。
届かない想い。
一方通行な恋心。

それがまさかこんな形で届くなんて。

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