クールな婚約者との恋愛攻防戦
「そう言えば…….名前が似てるから、身代わり扱いしてるんじゃないか、みたいなこと言ってたよな」

突然、あの時の私の発言を蒸し返され、「え?」と聞き返してしまう。


「確かに名前は似てるけど、愛梨とあいつは全然違う」

「そ、そうだよね。藍実さんの方が美人だし大人な女性だし……」

「そうじゃない。あいつのことは最初から友人としてしか見てなかった。だけどお前は違う」

「え……?」

その言葉に、一瞬ドキッとしてしまうけれど、すぐに考え直す。
だって、会った時から婚約者だったのだから、友人として見られたことがないのは当然だ。

友人をすっ飛ばしての関係性。それは、良いことなのかそうでもないのか、よく分からない。
私的には、友人関係をしっかり構築している藍実さんの方が羨ましいかもしれない。


「ちゃんと意味、分かってるか?」

「分かってるよ。出会った時から友人じゃなかったからってことでしょ」

「バカ。そうじゃなくてだな……」


何だろう。樹君にしては珍しく歯切れが悪い。


宙に視線を彷徨わせながら、樹君は言葉を続けた。



「愛梨のことは、ちゃんと最初から女性として意識してたってことだ」

「え……?」


信じられない言葉が、聞こえた気がしたけれど。


「……嘘だ」

「嘘じゃない」

「だって、お見合いの日の樹君、凄く冷たかったよ。返事も素っ気ないし、恋愛感情に振り回されたくないってはっきり言ってたじゃない」


そう、それは紛れもない事実だ。
あの言葉のせいで、この先の夫婦生活は仮面夫婦になるのではないかと本気で心配したのだから。
< 72 / 79 >

この作品をシェア

pagetop