ここはディストピア あなたは亡国の騎士 わたしは愛玩物
ティガの白い指が伸びてきて、私の額に触れた。

ひやっとして気持ちよかった。


「……まだ熱がありますね。このままここでしばらく様子を見ましょうか。……ああ、私だけじゃありません。カピトーリから、わざわざ、駆け付けてくださいましたよ。……御夫婦で。」

そう言って、ティガは身体を起こした。


視界が広がる。


頭を動かすと、……いた。

少し離れたソファに、イザヤとミシルトが座っていた。


……御夫婦って……はは……。



ミシルトが立ち上がり、私のすぐそばにやって来た。

「やはりお引き留めすべきでしたわ。……居心地の悪い想いをさせてしまって……。イザヤさま。お言葉を。」


よそ行きの声がそらぞらしいけれど……まあ、夫の愛人に対する本妻ぶりっことしては、悪くないかもしれない。



めっちゃティガが観察してるなか、ミシルトに呼ばれたイザヤも渋々立ち上がった。


「だからまだ早いと申したのだ。無理をするからだ。」

偉そうな口ぶりが、何だか不機嫌に見えた。


「……来てもらって、お礼言うべきなんやろうけど……仏頂面されても……。」



嫌な感じ!


私は、ティガを見上げた。


ティガは、私の目を見て、言わんとすることを理解したらしい。


「イザヤどの。ミシルトさま。御足労ありがとうございました。あとは私がついておりますので、どうぞ、御安心なさって、御引取りください。」



私も、無言で何度もこくこくとうなずいた。



イザヤは、ますます不機嫌な顔になってしまった。


対照的に、ミシルトは不敵な笑顔を見せた。

「そうですわね。……あなたにも、久しぶりにお会いできて、うれしゅうございましたわ。ティガ。……そうそう。いつ頃、カピトーリに戻られますの?わたくし、イザヤさまのお育ちになられた湖のお館で暮らすことを、楽しみにしていますのよ。」


さっさと館を明け渡せ……と暗に言われ、ティガも口元を緩めた。


「では、このままご一緒に参りますか?ここからでしたら、カピトーリに戻られるより近いことですし。……館も、湖も、既にミシルトさまの御料地と伺いました。遠慮なさらずに。どうぞ、どうぞ。」


心にもない誘いをミシルトが一笑した。


「あら、わたくしたち、取るものも取りあえず駆け付けましたのよ。初めて館に参りますのに、手ぶらでは。」
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