ここはディストピア あなたは亡国の騎士 わたしは愛玩物
ただ、少し深めの傷は……まだじゅくじゅくと、黄色い汁を滲ませて腫れている。

これが、発熱の原因なのだろう。



「リタは、順調みたい。よかったぁ。……ドラコ、喜んでくれた?」


やっと、聞きたかったことを聞ける程度に元気が出てきた。




リタは、頬を染めて……とてもかわいらしく頷いた。

「……うん……。ドラコ、泣いたの。お礼言われた。……結婚する気はなかったから、家のこととか、本当は心配だったみたい。ティガは跡取り作れないし。自分は、戦士だから、私と子供のそばにいられないけど、任務が終われば必ず帰宅するから、正式に結婚して家族になってほしい、って……まいら?ねえ、聞いてるの?まいら?」


リタの幸せなノロケは、途中から私の耳に届いてなかった。


いや、正確には聞こえてはいたが、私の脳内は完全に占拠されていっぱいいっぱいになってしまっていた。


何て?

リタ、何て言った?


ティガは、結婚しない主義なんじゃなくて……子種がないってことか?



……えーと……。

イロイロ合点がいくんだけど……。



お互いに好意を抱きあっていてもミシルトを遠ざけたのは、ティガに子種がない……もしくは不能だから……。



あ!

わかった!


ミシルトは知らないけど、シーシアはソレを知ってるんだ。

だから……ティガと結婚できないから、「神の花嫁」なんだ。


シーシアにとって、ティガの勧めは絶対的で……神にお仕えすることが、そのまま、ティガへの愛の奉仕なのかもしれない。



うわあぁぁぁぁっ!

何て報われない!


つらい!

つらすぎる!



異世界って、もっと、のほほーんと穏やかで、ハッピーエンドだらけのイメージやったのに。

これじゃ、バッドエンドの宝庫やん。


……だいたい、オーゼラが滅亡して、王族や貴族皆殺しの段階で……悪夢でしかない。


私の元いた世界の日本のほうが、どれだけみんな恵まれていたか。


飽食が幸せの価値観をより複雑に変えてしまっただけで、みんなみんな、充分に満たされて幸せだったんだ……。


帰りたい。


心から、私はそう思った。



イザヤもいないし……もう、いいや……。


湖に飛び込んだら、戻れるかな?

それとも死んじゃうかな?


……どっちでもいいや。


***

どんなに悲観的になっても、ヤケクソになっても……いかんせん、足首の骨折は、厄介だ。
< 249 / 279 >

この作品をシェア

pagetop