ここはディストピア あなたは亡国の騎士 わたしは愛玩物
「私に?ミシルトさまが?」


ティガは、かなり不満そうに聞き返した後、しばし沈思して……ため息をついた。


「……ミシルトさまも苦労なされたのでしょう。昔はあんな風に心を偽り相手を試し弄ぶようなかたではございませんでした。わがままなぐらいご自分の感情に正直で、それはもう、聡明で愛らしい姫君でしたが……。」



「ふぅん……ティガ、けっこう好意的やったみたいに聞こえる。……ミシルト、その頃、ティガにふられたって恨み言ゆーてたよ。」



ティガは、悲しそうに首を横に振った。

「私は、ミシルトさまにふさわしくありませんので、仕方ありません。……オピリア王は善良なかたですから、ミシルトさまは何不自由なく過ごせると思い婚礼をお勧めしたのですが……やはり慣れない異国での生活は、お人柄を(たが)えてしまったのでしょうか……。」



……うん……ちょっと、違うかも。


オピリア王が善良だから、ミシルトは惚れ込んで……「白い結婚」を破っちゃったのよね。


人柄が変わったのは、母国に連れ戻されたからじゃないのかな?



……そのへんのこと、あまり聞けなかったな。

次に逢ったら、イロイロ聞けるかな……。



……そのとき……イザヤは……どうしてるのかな……。



イザヤ……。


……ごめん……。





いつの間にか、私は目を閉じて……眠りかけていたようだ。




「……疲れましたか。おやすみなさい。……せめて、よい夢を。」


ティガの穏やかな声が心地よくて……。


導かれるように、私は深い眠りに落ちた。



****

2日後、ようやく熱が下がり、宿を発った。

ティガは、休み休み進んでくれた。

しかし館までの4里半の道のりが、また身体の傷に響いたのだろうか。

帰館するなり、ふたたび発熱してしまった。



「傷が化膿しているのかもしれません。」

ティガはイザヤの依頼通り、私の傷の治療に腐心した。


「まいら。大変だったね。……後悔してる?」

リタは、私の大怪我に責任を感じているらしく、甲斐甲斐しく世話を焼きにきてくれた。


「大丈夫。……怪我、骨折以外はたいしたことないんやけど……ほら、私、傷の治りが悪いから。」


それでも、ほとんどの箇所はだいぶ血が止まり、赤黒い瘡蓋(かさぶた)になっている。

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