ここはディストピア あなたは亡国の騎士 わたしは愛玩物
ティガは言いにくそうにしてたけど、私が頑として譲らず、説明を求めたので、あきらめて教えてくれた。

「我が家は代々カピトーリの国の軍を預かる家です。」

「将軍?司令官?……とにかく、騎士の家なのね。貴族?」

「ええ。イザヤどのと同じように、元は王族で、叔母、つまりシーシアさまのお母上さまは、現在のカピトーリ王の姉君です。」


それは、貴族は貴族でも、かなり身分の高い家柄じゃない?


「あー、だから、シーシアは神の花嫁なんだ。」

やっぱり斎宮みたいなものなのね。


ティガは恭しくうなずいてから、心苦しそうに続けた。

「叔父、つまりシーシアさまのお父上さまには、かつて将来を約束した恋人がいました。ですが、王の姫君の降嫁を断ることはできません。叔父は恋人とお別れしてから姫君をお迎えいたしました。そして、今に至るまでずっとご夫婦は仲むつまじくお暮らしです。」

「うん。で?」

「……リタが叔父の種で生まれたことは間違いありませんが、決して公式には認められることはないのです。」

「えー……えーっと……そういうことか。あー、なるほど。じゃあ、リタはシーシアの腹違いの妹?」

「まいら。二度と口に出してはいけません。リタは、シーシアさまの縁者にすぎません。これからも、ずっとです。」

ティガはキッパリそう言ってから、ため息をついた。


「リタの母親の死後、叔父がリタを引き取りましたが、叔母上の手前、あの家ではリタは存在していないことになっています。シーシアさまはリタをかわいがってらっしゃいますが、妹とは決して扱えません。リタは生涯シーシアさまにお仕えする気でいます。シーシアさまが神の花嫁としてのお役目をお勤めの間は、助手という名目で私が保護しています。」


……納得いかない。


「極端な話ね。一夫多妻制も気に入らないけど、できてしまった子供の存在を認知しないってのは、非人道的すぎてムカつくわ。」


そう言うと、ティガが苦笑した。

「国が違えば、宗教も法律も文化も価値観も違うものです。まいら。私も、カピトーリの政策が絶対的に正しいとは言いません。ですが、自分の尺度で他者を断罪するものではありませんよ。」


ドキッとした。

前にも言われたことがある。

……お父さんや孝義くんにも、かつて言われてきたかもしれない。
< 83 / 279 >

この作品をシェア

pagetop