策士な課長と秘めてる彼女
大学卒業を間近に控えた日葵は、両親と離れ、一人、祖父の忘れ形見である蒼井本家で暮らし始めた。

同居犬となったメアリーは、なんと、お腹に子を宿していた。

出産した3匹のうち、２匹は死産、無事に生まれてきた１匹が柊だった。

クリスマスに生まれたから柊（しゅう）。

クリスマスの木゛ひいらぎ゛から取った名前だ。

メアリーは、過去に子を産みすぎて弱っていたのか、柊が乳離れをしたのを見計らうかのように息を引き取った。

日葵は、その数ヵ月の間に、大切な祖父と犬三匹を看とることになってしまった。

残された柊は、日葵にとっては祖父やメアリーの代わりであり大切な家族だ。

就職するまでの数ヵ月間、日葵は必死で柊の世話をした。

就職してからの一年間は、昼間は知り合いの警察犬訓練所に柊を預けしつけをしてもらった。

「とにかく、この３年あまり日々をやり過ごすことに必死でした。仕事に慣れるまでは、逆に私も柊くんに随分支えてもらったし、柊くんが彼氏よりも親しい関係であることは否定できません。何より勘違いしてもらえたことで飲み会がキャンセルしやすくて助かりましたので・・・」

と、日葵は肩をすくめた。
< 18 / 149 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop