策士な課長と秘めてる彼女
「ちっとも・・・良くないだろ」

陽生の周りに不穏な空気が宿る。

思わず陽生を見上げた日葵に従うように、目を閉じて伏せをしていた柊が、陽生を威嚇し始める。

「皆の勘違いと、日葵が否定をしなかったせいで、俺は3年も指を咥えて見ているだけだったんだ。どうしてくれる」

日葵の顎を右手で掴んで肩を引き寄せた陽生に、柊がバゥ!っと吠えた。

「柊、stay!」

陽生の低くこもった声に、柊がピクリと耳を立ててその場に立ちつくした。

ステイとは、全ての動きを禁じる言葉だ。

どうしようかと迷っている柊はレアだ、と日葵が思っている隙に、陽生は日葵の唇を奪っていた。

バゥッ!

今度こそ、柊が陽生に体当たりをする。

「ふん、おせーんだよ、柊・く・ん」

勝ち誇った陽生が、呆然としている日葵の手からスマホを奪い、ササッと操作してSNSのIDと携帯番号を奪う。

「日葵、俺は一旦先に戻るけど、後で忘れ物を取りに来い。場所は後で連絡する。昼までには準備するように」

そう言って、またも陽生は昨夜と同じように後ろ向きに手を振ると、颯爽と車に乗り消えていった。

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