策士な課長と秘めてる彼女
「二人きりになって、飲み屋で広告の取材を受けたところまではわかった。それがどうなったら、お前が蒼井の家に転がり込む流れになるんだよ」

呆れる悠馬を

「゛溺れる者は藁をも掴む゛っていうじゃない。なりふり構っていられなかったのよ」

と、蘭が宥める。

「゛策士策に溺れる゛にならなきゃいいけどな」

ワッハッハ、と笑い続ける悠馬と蘭を横目に、陽生は素知らぬ顔でランチを食べ続けた。

「それにしても、まあ、タイミングよくマンションが火事になったものね」

蘭の言葉に陽生は返事をしない。

「ま、まさか、嘘なのか?蒼井は騙されたり嘘つかれたりするのを極端に嫌うぞ?心は侍だからな」

悠馬の゛蒼井゛という言葉に反応して、陽生が顔を向ける。

「嘘じゃないさ。俺の部屋から煙が出たのも、スプリンクラーが作動したのも、フロアが水浸しになったのも」

「・・・黒っ!」

そう、誰が原因で、何のためにそうなったかまでは日葵には伝えていない。

すべては嘘でなければいい、事実は作るものである。

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