策士な課長と秘めてる彼女

甘い誘惑

「陽生さんが結婚とか軽はずみなことをいうから、あっという間に結婚する話が進んでしまったじゃないですか!陽生さんのご両親にもなんてお詫びをすればいいか・・・」

六畳の和室は離れにあり、昔、祖父が書斎として使っていたところを客室としてリフォームした場所だ。

中庭を挟んでおり、本家とは少し距離があるため、お客として訪れた者はゆっくりとくつろぐことができるとなかなかの評判だ。

パス・トイレ付で日葵の父も一人になりたいときはここを利用することがあると言っていた。

「初めから俺は結婚前提のつもりだった。日葵の両親も祖父母も、そして俺の両親も弟もみんな賛成してくれている。これ以上の後押しはないだろう」

静かな家屋に陽生の低音ボイスがこだまする。

「でも、私達、そんなにお互いを知らないし・・・」

「ひとつ屋根の下で1週間も暮らしたんだ。充分だろ」

確かに陽生の嫌なところも許せないところも何もない。

だが、婚約者というには決定的な何かが足りないし、ましてや恋人同志になったのは、つい先程、今日なのだ。

「お前を不安にしているのは何だ?俺の愛か?」

艶かしく顔を近づけてくる陽生に、日葵の中で警鐘が鳴り響く。

これ以上、陽生を刺激すると自ら罠にかかってしまう。

頼りの柊は、今は本家の一室に寝床を作ってもらって寝ているため助けは望めない。

ジワジワと日葵に詰め寄る陽生。

ズリズリと後ろに下がる日葵。

「日葵が俺の愛を疑わなくなるように存分にわからせてやるよ」

欲望を滲ませた瞳で、陽生は日葵の唇を奪う。

「は、陽生さん・・・あ」

「ご両親の同意も得た。日葵の気持ちも聞いた。もう我慢はしない。俺の気持ちを存分に感じてくれ」

陽生はキスを段々と深くしながら、日葵の体を撫でていく。

心は戸惑っているのに、日葵は何故か抵抗ができない。

愛しさを滲ませた瞳と優しい手つきに、日葵は段々と理性を失っていく。

「日葵、俺に堕ちてこい」

そんな言葉を最後に、日葵は身も心も陽生の手に堕ちていた。
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