策士な課長と秘めてる彼女

迷い

いつもお堅い顔つきでパソコンを睨んでいた真島課長の表情が柔らかくなった。

陽生が公言するお陰で、日葵との結婚前提の付き合いは公然の事実として周知されてはいるが、全く陽生に興味を示してこなかった日葵が手のひらを返したように゛真島課長゛と交際を始めたことを良くは思わないお姉さま方がいるのは仕方のないことだった。

どんなに周りが

゛真島課長格好いい!゛

と騒いでも、日葵だけは全く興味なしの姿勢をとっていた。

「ちょっと、蒼井さん、一体どういうことなの?ずっと彼氏一筋だったはずなのに、ふられたからってアッサリと真島課長に乗り換えるなんて。槙ちゃんの気持ちを知ってて良くそんなことできるわね」

怒濤の週末が明けた月曜日。

心身の疲れを残したままの日葵は、数人の女性スタッフによって、第三会議室に呼び出されていた。

槙ちゃんとは、28歳の営業部課長の第二秘書だ。

゛槙ちゃん゛が真島課長を一途に想っていることは、Hashimitsuでは知らないものはいないほど公然の事実だった。

黙々と秘書のスキルを磨き、陽生が課長になるタイミングで課長秘書の座についた強者だ。

゛槙ちゃん゛はコツコツと努力をし続け夢を叶えた、と周囲からの評判もいい。

ただし、陽生本人は初めから一貫して槙ちゃんを拒否し続けて、上司と部下以上の関係になることはないと公言していたこともスタッフは知っている。

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