策士な課長と秘めてる彼女
「真島課長」

陽生がエレベーターの前でスマホを操作していると、秘書課の方から一人の女性が駆け寄ってきた。

「あんたは?」

嫌悪感を隠そうともしない陽生に、怯まずに彼女は名前を名乗った。

「日葵ちゃんの同期で、経理部グループ秘書の手塚といいます」

陽生は、日葵の仲の良い社員は蘭だけだと把握していた。

怪訝そうな陽生に

「昨日、日葵ちゃん、あの人達に第三会議室に呼び出されていました」

と、有用な情報を持ちかけてきた。

「私は槙さんの取り巻きグループではありません。もちろん昨日はその場に同席はしていませんでしたが、終業後の更衣室であの人達が話していることを聞いたんです」

手塚の話によると

槙の取り巻き秘書は連れだって第三会議室に行き、呼び出した日葵に、陽生との結婚を考え直せと迫った。

長年一途に思い続けている槙の気持ちを考えろとか、婚約をぶち壊すなとか、そう言った意味合いのことを日葵に告げたらしい。

日葵は同意しなかったものの、動揺して涙目になっていて気が晴れたと、槙の取り巻きの秘書達は高笑いしていたらしい。

槙とその取り巻きの腹黒さにヘドが出る、と陽生は唾を吐きたくなった。
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