大人の女に手を出さないで下さい
「それとも梨香子と付き合いながら子供は他で作るか?もしくは若い女と結婚して梨香子を愛人にするか?」

「なんで…そんなひどい事を…」

「これは極論だ。勿論君がそんなひどい事をするとは思ってない。しかし君は一人息子だ。どうしても跡取りを作らなきゃいけない立場だろう?
結局、梨香子を傷つけ苦しませるのは彼女の年齢と君との年齢差だ。梨香子もそれが分かっているから君の申し出を断り続けているんじゃないのか?」

傷ついたように青い顔をした蒼士は俯き速水はため息を着いた。
しかし、そこまで考えた上で蒼士は本気で梨香子を想うことが出来るのか?速水は彼の本気が知りたいと思った。

「よく考えてくれ。梨香子と付き合うとはどういうことか。梨香子の一生を背負うには君は若すぎるんじゃないのか?」

蒼士は顔を上げ意外にもギロリと強い視線を速水に向けた。
その時速水のグラスからカランと氷の音が鳴る。
諦めさせたいわけじゃなく現実を知って欲しかったのだがその反抗的な目に触発され意地の悪い話をする。

「三雲社長も梨香子を気に入ってるようだな。社長が望むのなら私は社長に梨香子を託したい。君ではダメだ」

「何故?俺はダメで親父はいいんだ?」

「年齢的にも立場的にも最適だと思わないか?社長の跡取りは君がいるから子供を望まれる必要もない。君が跡を継ぎ隠居すれば紳士な彼の事だ梨香子と穏やかな結婚生活が送れるだろう。梨香子もその方が何の苦悩も無く幸せになれるはずだ」

「親父と、梨香子さんが…」

「どちらにしても梨香子とは家族になれる。傍に居られるんだ、君にとってもいいだろう?その場合、妻として、ではなく義理の母、ということになるが」

これでもかというくらい蒼士の事を追い詰めた。
これで梨香子の事を諦めるのならそれまでの男ということだ。
さあ、年上の女に手を出すとはどういうことか知った彼が、どう決断をするのか楽しみだ。

速水は優越感に浸りながら額を抑え考え込む蒼士を見つめ、溶けた氷で薄まったウイスキーを一気に飲み干した。



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