大人の女に手を出さないで下さい

「豊子さん、いくらなんでもどこの馬の骨は失礼すぎますよ。英梨紗ちゃんは梨香子さんが愛情深く大切に育てた立派なお嬢さんだ。他人の豊子さんに揶揄する謂れはない」

「…それは…」

「妻の非礼は私が謝る。申し訳ない」

豊子が言い淀んでるうちに慎太郎がしっかり頭を下げて謝った。
それを見た豊子が申し訳ありません言い過ぎましたと小さな声で謝罪した。
蒼士はかなり怒ってるようで謝罪を聞いても険しい表情は崩さなかった。
蒼士が代わりに怒ってくれてるなんて不思議な気持ちで怒りが収まってきた梨香子に豊子が逆なでするように言い捨てる。

「でも、片親だと目が行き届かないんじゃなくて?こんな誰もいない家に上がり込んでふしだらな。さすが若い蒼士さんをたらしこんだ方の娘さんね」

「は…?」

片親の何が悪いというのだ。
いかにも教育がなされていないと言わんばかりの言い草。
しかも梨香子と蒼士の付き合いにまで愚弄する言い方にまたもや梨香子はカチンときた。

「豊子!いい加減にしないか!」

梨香子も蒼士も、琢真や英梨紗も反論しようと動き出した時に慎太郎の一喝が飛ばされた。
ばつが悪そうに口を噤む豊子。
しーんと静まり返ったところに徐に慎太郎は前のめりに頭を下げる。

「重ね重ね妻が申し訳ない。蒼士とあなたの事は先日聞いていて姉さん女房とは良い事だと思う。妻は色々頭が固くてな、息子の事になると融通が利かない。息子可愛さゆえの事だと許してもらいたい。私は琢真とそちらのお嬢さんの交際には反対はしないよ。将来を誓い合うほど好き合ってるならいいじゃないか」
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