大人の女に手を出さないで下さい
それからの梨香子は蒼士の誘いを3回に1回は受けるようになった。
でもその殆どが英梨紗とトミちゃん付き。
英梨紗はいいとしてなぜトミちゃんまでが?と、蒼士は腑に落ちなかったけども梨香子が一緒がいいと言うもんだから仕方がない。

一度だけ、二人きりで食事に出掛けたことがあった。
レストランで美味しい料理に舌鼓を打ちながら話は弾み蒼士は梨香子と二人きりの幸せを噛み締めていた。
夜景の綺麗なバーでは言葉数は少なかったがしっとりとした雰囲気が心地良く、お酒のせいかいつになく大人の色気を漂わせた梨香子に蒼士は理性のタガが外れそうになった。
名残惜しく思いながら帰りのエレベーターに乗り梨香子の肩を引き寄せ堪らず頭上にキスをすると、ピクリと梨香子の肩が反応したが特に抵抗もされなかったので、そっと彼女の顎に手を添え上を向かせると艶かしい唇に自分の唇を重ねようと屈んだ…
が、急に顎を抑え込まれ上を向かされ首がぐきっとなった。

「蒼士くん、調子に乗りすぎ」

ハイ、調子ニ乗リマシタ…。

梨香子にジロリと睨まれ首を摩りながらまだ時期尚早だったかとガッカリしつつ苦笑いでなんとかその場を取り繕う。

「言っただろ?仕掛けていくって。いい雰囲気なんだから少しは応じてくれても良くない?」

「お生憎さま。大人の女はこれくらいのことで流されたりしないのよ」

ツンとソッポを向かれ、ガードの硬い梨香子に蒼士は完敗だとこっそり肩を落とした。
それ以来、警戒されてしまったのか二人きりのデートは叶っていない。
恐るべし、一筋縄ではいかない大人の女。
蒼士と梨香子の攻防戦はまだまだ続く。

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