大人の女に手を出さないで下さい
エレベーターは直ぐに開き梨香子は乗り込む。

「明日は気を付けて帰って下さいね。今日はありがとうございました。では、失礼しますね」

「…ええ、こちらこそ今日はお付き合いいただきありがとうございました」

ではまた、と扉が閉まるまで元倉は物言いたげな瞳のままひらひらと手を振っていた。
ウィン…とエレベーターが動き出し梨香子は胸を抑え壁に寄り掛かった。
鈍感な梨香子でもあのまま誘われて部屋に入ってしまったら危険な気がした。
でも、普段爽やかなイケメンが豹変するとあんなにも色気が出るのかと目を瞠った。
いつもならさらりとかわしていたところなのに一瞬気を取られて内心慌ててた。
というのも、元倉のたれ目とは違う、熱のこもる瞳が脳裏によみがえりその瞬間に胸がドキンと大きく跳ねたから。

「いやいや…いやいやいや…」

胸の高鳴りが治まって来た頃、今度は頭を抑え独り言を呟き首を横に振った。
そこで別人を思い出すとかどうかしてる。
しかも罪悪感まで出てきて自分が悪い事をしている気になってしまう。
オカシイ、何に対しての罪悪感?私なのもしてないわよ?と思っているのに彼の顔がふと過ぎってやっぱりいやいやいや…と頭を振るのだった。
そして翌日のトミちゃんの尋問でその罪悪感は暫くの間梨香子を悩ますことになる。
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