女40歳、お嫁にもらってもらいます!
そしてしっかりと大野くんに視線を合わせた。

「お疲れ様。」

私はくるっと身体の向きを変えると、家へ向かおうとした。

「郁美!」

「お願い、その呼び方は辞めてくれないかな。私はあなたの上司なのだから。」

その瞬間、後ろから片手を取られた。

「…放してくれないかな?」

私はポツリとつぶやく事しか出来ない。

「ちゃんと顔を見せて下さい。」

「あなたも後悔しているでしょう。私なら良いのよ。こないだの事はやっぱりなかった事にしましょう。」

黙っている大野くんの手に力が入った。

「郁美…、係長はそれで良いんですか?」

その言い直した私の呼び方が胸をぎゅっと掴む。

私はやっぱり大野くんの方を振り返る勇気はない。

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