このお見合い、謹んでお断り申し上げます~旦那様はエリート御曹司~

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(ーーん……)


ふっ、と夢から醒める感覚がした。ゆっくりとまぶたを開けると、きめ細やかな肌が視界いっぱいに映る。


「っ!」


筋肉質な胸板に、完全に目が覚めた。そこで、ぶわっ、と昨夜の記憶が蘇る。すやすやと穏やかな寝息を立てている律さんは、私を抱きしめるように眠っていた。


(…そうだ。昨日、律さんの家に泊まったんだ…)


初めての夜の熱を思い出し、ぼぼぼ…!と頬が熱くなる。今でもまだ信じられない。よくあんな“大胆に”誘えたものだ、と今さら昨日の自分が恥ずかしくなる。

そっ、と視線を上げると、無防備な寝顔が目に映った。目を閉じていると、彼のまつ毛が長いことがよく分かる。いつもより少しだけ幼い表情に、思わず頬が緩んだ。

ぎごちなく視線を下ろしていく私。綺麗な首筋から、引き締まった体が見えた。いつもスマートに着こなしているシャツの下はこんな感じなのか、と変態みたいなことを考えてしまう。

昨日は緊張のあまり目を逸らしてしまったが、朝の明るい日差しに照らされた体が綺麗で、私はつい見惚れてしまった。


(ぱっと見、ピアノが似合う出で立ちなのに、実は結構筋肉質なんだな。…それにしても、綺麗な肌。なんのお手入れしてるんだろ…)


と、その時。頭上から少し掠れた艶のある声が響く。


「ーー…百合。…くすぐったい…」

「!」

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