このお見合い、謹んでお断り申し上げます~旦那様はエリート御曹司~

くすくす、と笑う奏さん。笑うと、やはり律さんによく似ている。“ビジネスモード”からスイッチを切り替えたような彼は、色っぽく目を細めてにこり、と続けた。


「髪、下ろしてると印象かわるね。律と何かあった?」

「っ!!な、何かとは?…律さんとは仲良くさせていただいていますが…」

「ほら、いつの間にか名前で呼んでるしさ。式の日取りが決まったら早めに言ってね。ちょっと無理してでも空けるから。あ、海外で挙式するなら友人の経営してるホテル手配するけど。」

「え!えっと…」

「ふふ、冗談だよ。本当に百合ちゃんは面白いね。」


また、してやられた。

奏さんがこういう人だと分かってきたつもりだが、やはり飄々として心情が読めない彼はいつも私より一枚上手だ。奏さんを翻弄して余裕を奪うことなんて、私には一生不可能なのだろう。

むぅ、と奏さんに眉を寄せると、彼はひとしきり楽しそうに笑った後、ふっ、と小さく息を吐いた。用件も済んだし、そろそろ帰ろうか、と思っていた矢先、頬杖をついた彼はわずかにまつ毛を伏せる。


「…で。ここからは本題。ーー最近、何か変わったことはあった?」

「?」

「例えば、見知らぬ男に付けられてる、とか。背後に気配を感じる、とか。」


私は、彼の言葉に、はぁ、と息を吐く。


「…またからかってます?もう動揺なんてしませんよ。」

「ふぅん、言うねぇ。…じゃあ、そんな百合ちゃんにコレを。」

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