このお見合い、謹んでお断り申し上げます~旦那様はエリート御曹司~

ーーそれは、遡ること三ヶ月前。祖母に仕組まれた“お見合い”は、きっと私が逃げ出さなければ、水仙の間で厳かに始まったことだろう。今は簡易な浴衣であり、彼もスーツではないが、旅館の落ち着いた雰囲気はあの日のお見合い会場を彷彿とさせた。

隣に座る彼は、わずかに口角を上げて静かに口を開く。


「ーーまずは自己紹介からだな。…俺の名前は榛名律です。」 

「ふふっ。…私は、逢坂百合と申します。」


初めて会った時よりも丁寧な挨拶に思わず笑みが溢れる。大人のホテルで名刺交換をした夜が懐かしい。

流れで始まったお見合い(ラウンド2)に、二人とも乗り気になって笑い合う。


「…律さんは、お仕事は何をしているんですか?」

「ハルナホールディングスの副社長を務めています。今は、海外とのマーケティングや新規コンサートの企画運営が主かな。」

「へぇ…っ!海外ともやり取りしてるんですか?」

「ウチは海外にも支社がいくつかあるから。」

「そ、それは知らなかった…」


きっと、あの日本当にお見合いをしていたなら、今と同じ反応をしていただろう。それか、大財閥の御曹司で海外と取引が出来るほど語学が堪能で、おまけに容姿も優れているだなんて、揃いすぎていて逆に引いたかもしれない。

あの日の自分はまだ、借金返済のために結婚しようとしていた。…自分にはもったいないほどの彼に罪悪感を覚えて結局断っていたかもしれない、とまで思える。

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