このお見合い、謹んでお断り申し上げます~旦那様はエリート御曹司~
一筋縄ではいかない男、榛名 律。
しかし、要領を覚えれば仕事は早い。人参でコツを掴んだのか、気が付けば玉ねぎやジャガイモも切り終えている。
(手先は器用なんだよなあ。今日初めて包丁を握ったとは思えない。)
やがて調理は進み、高級食材が私の家に買い置きしてあった比較的安価なカレールーに混ざっていく。
ずっと鍋を見つめて“火の当番”をする彼は、菜箸片手に野菜の火の通り具合を確認していた。
その立ち姿でさえ様になる。つい見惚れてしまうのが少し悔しい。
「ご飯、炊けましたよ。ルーはどうですか?」
「ばっちりだ。任せておけ。」
「ふふ…っ」
誇らしげな彼が、無邪気な子どものような顔をする。
テーブルに並んだ二人分の食器がなんだかくすぐったい。一緒に料理を作って、同じ食卓で食べて…これじゃあまるで、本当の“新婚さん”みたいじゃないか。
ーーカタン。
二人揃って席に着き、ちらり、と目を合わせる。
「いただきます。」
「…いただきます。」
私に続いて手を合わせた彼。
しかし、穏やかな時間が流れていた次の瞬間。一口カレーを口に運んだ私たちは、同時に目を見開く。