このお見合い、謹んでお断り申し上げます~旦那様はエリート御曹司~
何を言っているんだ、この人は。
私が覚えていないくらい昔から、ずっと好きでいてくれたの?私のために会社を継ぐ気になってくれたの?
「ーー百合。俺の行動原理は、いつだってお前だ。」
その言葉は、嘘だとは言えなかった。
こんなにまっすぐ伝えられては、もう認めざるを得ない。
ぱくり、とカレーを口に運ぶ彼は、時折顔を歪めながら私に告げた。
「百合が“料理上手な男がカッコいい”というなら、次は調理器具を揃えて家で予習してくる。」
「へっ…!」
「リベンジの機会くらいくれてもいいだろ?」
私を見つめる瞳は、ねだるようでいて引く気はなくて。
結局、私はこの俺様御曹司に敵わないのだ。
「…お、弟と祖母を呼んでいいなら…」
それが私の口から出た、最大の譲歩で、最上の強がりだった。彼は「家族に挨拶する手間が省けるな」なんて都合のいい解釈をしている。
違うんだ。私はただ、“せっかく高級な食材を用意して料理を振舞ってくれるなら、貧乏生活を送っている家族にも食べてほしい”と思っただけだ。
だから決して、“素直に次の約束を認めたくないから言った”、というわけじゃない。
彼は、そんな私の心を全て見透かしたように、ふっ、と艶のある笑みを浮かべていたのだった。