このお見合い、謹んでお断り申し上げます~旦那様はエリート御曹司~
ーー幼い頃の園遊会。
両親がいなくなった後のショックが大きすぎて、幸せだった頃のことはあまり覚えていない。もし、彼の話が本当なら、こんな“運命的”な再会はないだろう。
彼は、ふっ、と自嘲気味に笑う。
「相当昔の話だから、百合が覚えていなくても仕方がない。まぁ…、俺は“お前に惚れたせいで”忘れる日はなかったけどな。」
「っ、げほっ、ごほっ!!!」
つい、ゴクゴクと喉を冷やしていた水が気管に入る。
動揺して咳き込む私をよそに、彼はいたってクールな表情だ。
「っ、“惚れた”だなんて!冗談やめてください!」
「冗談じゃない。園遊会やピアノのコンクールに出るたび、ずっとお前を探してた。ピアニストになろうと思ったのも、お前が喜ぶと思ったから…」
「今はピアニストじゃなくて、“副社長”じゃないですか…!」
「それはお前の家が破綻して、身寄りがなくなったと聞いたからだ。俺が会社を継げば楽な暮らしをさせてやれるし、何としてでもお前を見つけ出して救ってやりたいと思ってた。」
「!」
「あの見合いだって偶然なんかじゃない。母方の祖母に引き取られたと知って、やっと行方がつかめたと思ったら、百合に会いたくて仕方なくなってすぐに縁談をこぎつけたんだ。…結局、逃げ出されてしまったわけだが。」