このお見合い、謹んでお断り申し上げます~旦那様はエリート御曹司~
ーーと。彼の甘やかしっぷりに胸焼けしそうになったその時だった。
「ーーあら?奥さま。お久しぶりです。」
ふと、かけられた聞き覚えのある声。
紘太とともに振り向くと、そこに立っていたのはスーツ姿の日笠さんである。
「…あ!お久しぶりです…!日笠さん、お仕事ですか?」
「はい。出先がこの近くの商社だったものですから、奥さまに少し挨拶をしていこうと思いまして。」
にこり、と微笑む日笠さん。
初めて顔を合わせる紘太は、緊張気味に会釈をしている。
「そういえば今日、副社長が心なしかウキウキしていましたけど…、この後、会うご予定でも?」
「え!あっ、そうなんです…!実は、うちの実家に来ることになっていて…」
「まぁ…!素敵ですわね!それはウキウキするはずですわ。」
感情がダダ漏れの榛名さんに、つい苦笑する私。
すると、日笠さんにスマートフォンの画面をずいっ!と見せた紘太がニコニコと続ける。
「日笠さん、見てくださいよこの写真。すごくないですか?」
「わぁ、美味しそうですね…!」
テーブルに並ぶ料理の写真の数々に、目を丸くする彼女。
「奥さまは料理がお上手なんですね。副社長も幸せ者ですわ。」
「!あ、違います違います!これ、榛名さんが作ったやつなんです。」
「え?」