このお見合い、謹んでお断り申し上げます~旦那様はエリート御曹司~
あぁ。ご褒美を与えられたワンコのように、ブンブン振れる尻尾が見える。
さすが二十九歳の若さで副社長にまで上り詰めた男だ。仕事の実力だけでなく、人を味方にする力も長けているらしい。趣味嗜好を完全にリサーチして話を振ったりプレゼントを用意するなんて、相当“ガチ”だ。完全に“落とし”にきている。
「…榛名さん。紘太を餌付けするのはやめて下さい。」
「人聞きが悪いな。“義理の弟”を可愛がるのは当然だろう。な?紘太くん。俺を兄だと思っていいんだぞ。」
「へっ?!あっ、えぇと…」
「紘太を困らせないでください!」
御曹司オーラをここぞとばかりに発揮して紘太に迫る彼。困惑する紘太も、まんざらでもなさそうなのが厄介だ。
まずい。すでにうちの家族は、彼の手中に収められている。
「そうだ、百合ちゃん。せっかく榛名さんが来てくださったんだから、二人でゆっくり話したらどう?」
「?!」
「百合ちゃんのお部屋、引っ越したままにしてあるわよ。」
(ここでまさかの、“お見合い(ラウンド2)”?!)
どっ!と冷や汗をかく私。
一方榛名さんは、相変わらずクールなままだ。
「お、おばあちゃん!榛名さん、もう帰るから迷惑だよ!」
「俺はそんなこと一言も言ってないんだが。」