このお見合い、謹んでお断り申し上げます~旦那様はエリート御曹司~

すっ、と距離を縮める彼。

心臓がうるさいくらい高鳴ったその時。榛名さんは、きゅ…、と私の手に指を絡めた。


「ーー百合。俺は必ず、お前を惚れさせてみせる。」

「!」

「今日のところはこのまま見送る。だけどいつか、“帰りたくない”って言わせてやるから覚悟しておけ。」


するり、と解かれる手。

牙を隠していた狼の、ド直球な口説き文句につい固まる。動揺が止まらない私に、くすくす笑った榛名さんは艶っぽく私の髪を撫でた。


「このまま連れ帰ってもいいんだが。」

「っ!!か、帰ります!失礼しますっ!!」


バタン!

高級車のドアを思わず強く閉めた私。ハンドルに顎を乗せ、ちらり、とこちらを見やる彼は余裕の表情である。

そして、“おやすみ”、と薄い唇で紡いだ彼は、艶やかな微笑を残してアクセルを踏んだ。

遠ざかる車。

私は、無意識のうちに、見えなくなるまでそのテールランプを見つめていた。


…悔しい。こんな簡単に揺さぶられて。

ドラマで聞くようなベタな甘いセリフも、榛名さんが口にするだけで破壊力が桁違いだ。きっと、さっきのやりとりが町内のスピーカーで実況されていようものなら、この瞬間に、落とされた女性たちが“帰りたくないから連れ去って”と殺到していただろう。

そして、私も世界で一番“ちょろい女”だ。


ーーこうして。榛名さんの容赦ない“溺愛宣言”をモロにくらった私は、お風呂に入ってベッドに入っても、恋愛発作を起こした心臓のせいで眠れない夜を過ごしたのだった。

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