このお見合い、謹んでお断り申し上げます~旦那様はエリート御曹司~


ーードサ…ッ!


体に、感じたこともない重みがかかった。

押し倒されたのだと理解したのは、反転した視界に余裕のない彼の瞳が切なく揺れたのを見たからだ。

思考が、止まる。

声が出ない私は、ただただ彼を見上げることしかできない。


「…俺が、“からかってる”って…?」

「え…?」

「俺が、“本気じゃない”って、いつまで油断しているつもりだ?」


怒っているような、それでいてもどかしげな声。

熱を宿す彼の瞳から、目が逸らせない。


「…俺が百合のこと、“そういう目”で見てない、って、まだ思ってる?」

「!」

「それとも…。俺がお前に惚れてる男だって忘れてるのか?」


ーーちゅ、と、首筋に唇の感触がした。

後頭部を包み込むように落とされた口づけは、逃げ場がない。耳元で何度もキスの音がする。


「…っ、ん…っ…!…だ、だめ…!!」


抵抗しようにも、力が抜ける。

強引なようで、それは無理やりではなかった。まるで抑えきれない気持ちが溢れたようなキスは、私の反応を探るように続いていく。

すっ、と首元から顔を上げる彼。

熱を帯びた瞳と一瞬目が合う。

わずかに傾く首。

キスの前の包み込むような手つきに、ぞくり、とする。伏せられた彼のまつ毛があまりにも綺麗で、息が止まった。

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