このお見合い、謹んでお断り申し上げます~旦那様はエリート御曹司~

ぼそり、と聞こえたセリフ。

はっ、としたその時、榛名さんは見たこともないほど真剣な瞳で私を見つめる。


「ーー“脱いで”。」

「へっ?!!」

「すぐにドレスを脱げ、と言っている。」

「なっ、なんでですか?!!」

「“タバコ”。たぶん、その男の匂いが移ってる。」


するり、と肩をなぞる榛名さんの指。

思わぬ展開に、ぞくり、と甘い震えが走った。


「じ、冗談ですよね?無理ですよ…っ!」

「冗談じゃない。…脱がされたいのか。」

「!!んなわけないじゃないですか!」


背中に回る彼の腕。

肩が若干透ける程のレース生地のドレス。ビスチェタイプに編み上げられたリボンが解ける感覚がした。するり、と胸の締め付けが緩み、どくん!と心臓が音を立てた。


「だっ、ダメです!榛名さん…っ!」


もどかしげな表情で、すっ、と私を見上げる彼。

私は、動揺と混乱の中、必死に“弁解”しようと言葉を紡ぐ。

しかし、私が口にした名前を聞いた瞬間。榛名さんの纏っていた雰囲気がガラリと変わった。


「確かに、私は警戒心に欠けてました…!それは大人として反省します!でもっ、“ソウさん”には何もされてませんし、榛名さんもこれ以上私をからかうのはやめてください…っ!」

「!」

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