Q.I(きゅうあい)~短気で無垢で、天使な君を~

 柚葉の横顔に、そう言い放ってやった。


「……──」


 すると柚葉は、辛そうに顔を歪めるかと思いきや、むしろ──。


 むしろ、真っ直ぐに俺を見据えてきた。



 先生の既婚の事実は学校中に知れ渡っているし、柚葉が知らないはずなど到底なく──。

 ポリシーなのか結婚指輪はしてないが、別のクラスの副担を受け持った際に「結婚してますかぁ?」の月並みな質問に対し、先生は照れながらも頷いたのだ。

 先生の赴任時、浮ついた感情を抱いた女子たちもたくさんいただろう。御多分に漏れず、柚葉もその一人だ。──何せイケメン教師だし、大人だし、物腰も柔らかい。


 そんな女子たち恋心や憧れ、幻想は先生の結婚の事実で脆く崩れ去ったが、ただ──。


 ただ、柚葉だけは違ったのだ。




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