Q.I(きゅうあい)~短気で無垢で、天使な君を~
それと、もう一つ引っ掛かったのは──。
「お前、センセーに褒められたいためだけに、そんな必死で古文頑張ってんだ? 涙ぐましい努力だね」
「……っ、」
皮肉の笑みを漏らしてやると、柚葉は俺に振り返り、鋭く睨んだ。
「うるさいっ……! あんたみたいないい加減な奴に、分かるわけない!」
「…………」
半径1メートル以内の距離から見ると、わずかに柚葉の目が潤んでいた。
一瞬目が合うと、それを悟られまいとしてか、すぐに気まずそうに顔を背ける。
「……あんたみたいに、女の子にヘラヘラしまくってるようないい加減な奴には分かんない……」
「…………」
「どうせガキみたいって……単純なことで舞い上がったり沈んだりして、バカみたいって思ってるんでしょ──」
「──うん、バカみたい」
全てが先生だけのため──。こいつは、野波先生に会った瞬間から変わってしまった。
無性に胸が焦れて、イライラのピークに達した俺は──。
ハッキリと、現実を突き付けてやった。
「──…先生、奥さんも子供もいるんだぞ。いい加減目ぇ覚ましたら?」