人生の続きを聖女として始めます

「それでは今日の軍議を始める」

獅子王の一言が執務室に響き、その場の全員が背筋を伸ばす。
その場の全員とは、ガブリエラ、ロシュ、ドレイク、そして何故か私だ。
星見の宴の最後、獅子王は明日からも継続して軍議に参加するように言った。
もちろん、拒否した。
それもかなり強く。
でも、昨晩の獅子王からは、どこか強引で絶対に否とは言わせない、という確固たる意志が感じ取れた。
ここは早めに折れた方が楽だ、と過去の経験則が囁いた。
レグルスは反抗すればするほど、燃えるタイプの人間だった。
双子なら、ルリオンもそうかもしれない。
結局思惑通りになってしまうのだから、その間のやりとりの時間が無駄だということを、マデリンの時に既に学んでいる。
こうして、私は表情を固くしたまま、場違いな執務室に座っているのだ。

議題は、やはりバートラムの件から始まり、西の隣国からの密偵の情報、北の国境での小競り合い、そして、東のネスロでの暴動の件が上がった。

「こうしてみると、バートラムの情報は、統一性がまるでないな」

地図を覗き込み言うドレイクに、ガブリエラが返す。

「そうだ。きっと、撹乱しているんだろうな。本来の居場所を悟らせない為に」

「本来の居場所ねぇ……どこだろうな。俺達のウラをかきながら、各地を転々としてるのかねぇ?」

「よく財力が持つものだ。ヤツめ、国庫からどれだけくすねていたのか!」

ロシュは飄々と、獅子王は憎しみに顔を歪めて言った。
定かでない情報の為に大軍隊を動かすわけには行かない。
でも、バートラムを捕まえる為には動かなくてはならない。
はっきり言って、後手に回ってしまっているのだと、私も含め全員が気づいていた。

「ジュリ、どう思う?」

「へ?」

突然獅子王に尋ねられ、頭が真っ白になった。
彼は私に会うたびに態度を軟化させていく。
祝宴からすれば天と地の差があるほどに。
それが、策略なのかどうなのか判断がつかなくて困り、頭が真っ白になるのだ。

「バートラムのことを知りはしないだろうが……何か思い当たることはないか?気になることとか?」
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