人生の続きを聖女として始めます
「陛下!状態が良くありません。何か話しかけていて下さい!」

リブラが半泣きで懇願した。

「どうしてこんなことに……エスコルピオは……何をしていた!?」

オレは憎々しげに吐き捨てた。
こんなのは八つ当たりだ……。
だが、わかっていても止められない。

「ジュリ!!ジュリ!!しっかりしろ!もう一度チェスをしよう!今度はオレが勝つんだからな?」

「……………」

「勝ち逃げは許さないからな!どこまでも追いかけるぞ?」

「………………」

「それが嫌なら、頑張れ!!死ぬんじゃない!!」

「ん………レ、グル……ス……?」

何かに反応したジュリが譫言で言った。
それは、あの名前だった。
世界から消された名前。
要らぬと言われた男のつまらぬ名前。
だが、それに意味を持たせてくれたのは………。

「……は………ジュリ……やはり、君は……」

マデリン。
マデリン・ソーントン。
この世で唯一のオレの希望。
震える手を握り返して、その名をゆっくりと繰り返す。
冗談じゃない!
君を2度も失ってたまるか!!

「リブラ!!他に毒の知識のあるものは!?」

「はっ、はい!ええと、前大神官様なら……バロンス様なら!!」

「バロンス!?」

彼を思い出すと同時に辛い思い出も甦る。
バロンスもそんな胸の内を知っていて、早々に政治から身を引いたのだった。

「良し、ガブリエラを迎えに行かせろ!!大至急だ!!」

「はい!!ヴィス、その胸伝えよ!!」

リブラが指示すると、即座にヴィスは部屋を出ていった。
そして、続けてオレにも指示を出した。

「陛下は、ジュリ様に話しかけ続けて下さい!どうやら、効果があるようですから!!」

「ああ、わかった!!ずっと話しててやる!」

そう言って、白い手をもう一度しっかりと握った。
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