人生の続きを聖女として始めます
「あれ?今日何か行事があったかな?」

独り言を呟き、目の前の扉に近寄ると、中の様子を伺うために耳を澄ます。
中は静かで誰の声も聞こえない。
その静けさは逆に私の好奇心を煽った。
開けてみようか?覗くだけなら、誰にも気づかれないよね?
私は激しく鳴る鐘の音に急かされるようにして、つい扉を開けてしまった。

扉は音もなく開いた。
私はほんの2センチほど扉を開けたまま、中の様子を窺った。

聖堂内には、人の気配が全くない。
キョロキョロと目を泳がせると、祭壇と座席の中央にキラキラと輝くものが見え思わず声をあげた。

「なんだろ……すごくキレイ……」

その輝くものの正体を探るため視線を滑らせると、やがてあるものに行き当たった。
……なるほど、上部のステンドグラスの光が差し込んでいるせいで、こんな幻想的な光景を見せてるのか。
私の足は誘われるように祭壇へ向かった。
光は祭壇中央に集まって、七色の光を放ちながら不思議な紋章を写し出している。
……もっと近くで見たい。
そう思い、紋章の中央まで行く。

すると、さっきまで激しく鳴っていた鐘の音が突然止んだ。

「どうして……誰かが止め……」

その言葉が終わりきる前に、床に写っていた光の紋章が私の体を包み込んだ。
あまりの眩しさに目を細め、天を仰ぐと、今度は降り注ぐ光が私をくるむように覆い被さってくる。

「やだ……まぶしい……これ何!?」

《ど………か、我が………い……下さ………》

「誰??何を言ってるの?」

光の中で、私は誰かの声を聞いた。
それは必死に願う誰かの切なる願いのような。
絶望の中でもがく悲鳴のような。

そんな声だった。
< 16 / 238 >

この作品をシェア

pagetop