人生の続きを聖女として始めます
自分の目ではっきりと世界を捉えた瞬間、何もかもを思い出した。
マデリン・ソーントン、それが私の名前だった。
愛してはいけない人を愛し、かけがえのない子供を奪われ、惨めに死んでいったマデリン。
ああ!!そうか!
あの夢はここで実際に起こったことだった。
悪夢だと信じていたことは、前世の出来事を追体験していたのだ!

「聖女様?」

リブラの声に、私は我に返った。
聖女、聖女と言ったの?
私のことを?
まさか………………あの予言の………?

「えっとー……私は、あなたに聖女として召喚されたんですか?」

「ええ!そうです!百日祈願が功を奏し、漸く成功したのです!」

リブラは恭しくフードを取り、跪いて挨拶をした。
大神官リブラは思ったよりも、若く目がくりくりとして可愛らしい。
柔らかそうな茶髪も短いくせ毛で、どこか小動物を思い起こさせたが、そんなこと今、どうでもいい。

「元の世界に帰れますか?」

重要なのはこれよね?

「無理です。呼ぶ方法しかわかりませんっ!!」

リブラはいい笑顔であっさり断言する。
あまりにもあっさりしすぎて、私は思わず鼻で笑ってしまった。
昔聞いたラシャークの予言では、国に災いが降り注ぎし時、聖女が降臨するということだった。
つまり、今国は荒れていて、危機的状況に陥っている。
聖女が降臨してそれを救うらしいけど……どうして私!?
辛い思い出しかない国に召喚されて、更に救わなければならないなんて、何の嫌がらせ!?
冗談にしたって悪質過ぎる。
世の中に神様なんていないな、と、今度は大きくため息をついた。
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