人生の続きを聖女として始めます
エスコルピオの視線に押され、私は隣の部屋のレーヴェを訪ねた。
彼は部屋で何かの勉強をしていて、しきりに難しい顔をしている。

「どうしたの?レーヴェ」

「あっ……ジュリ様!あの……これ、わかりますか?」

レーヴェが私に見せてきたのは、算数の教科書のようだった。

「ん?ああ!これ、割り算ね?」

「割り算?……ええと、除法のことですか?」

あ、そうだ。
エルナダでは除法と言ったっけ。
現代での暮らしが長すぎて、少し忘れかけてたわ。

「そ、そう!除法。異世界では割り算と言うのよ?それで、どの問題がわからないの?」

覗き込む私に、レーヴェは「ここです」と指をさした。
その問題は小さい子供が解くには、結構な難問である。

「レーヴェ、すごいのね。こんな問題まで挑戦するの?」

「はい。僕、勉強は好きなので!」

得意気にレーヴェは笑った。
それにしても、5歳のレーヴェがこんな難問を解くなんてすごいわね。
現代では5歳と言えば幼稚園児のはず。
それが、割り算を解くってどうなの!?
ひょっとして、天才じゃないの!?

「ジュリ様?」

私の加速しつつある親バカを、レーヴェが止めた。

「あ、ごめん。ええと、これね?ふんふん、ああ、これはね………こうやって………」

レーヴェを悩ませていた難問を、私は華麗に解いて見せた。
と、カッコ良く言ってみたけど、その辺の高校生なら誰でも解ける……はず。
< 36 / 238 >

この作品をシェア

pagetop