人生の続きを聖女として始めます

報せ(獅子王)

ーーネスロ国境付近 夜営地ハーバル

隣国ネスロとの戦争は、5年前からの因縁から始まっている。
ネスロへ情報を横流ししていたエルナダの元国防大臣バートラム・スタンフォードを追いかけ、奴の噂を聞く度にあらゆる国へと出掛けてその真相を探った。
だが、逃げ足の早いあの男にいつも寸前で行方を眩まされ、恨みは募るばかりだった。
この5年の間、滾る怒りが収まったことなど一度もない。
いや、奴を捕まえてその罪を償わせた所で、この怒りが収まるとは到底思えなかった。

「獅子王陛下。ロシュです」

天幕の外からよく知った声がかかった。

「入れ」

ロシュは慣れた手つきで天幕の布をたくし上げると少し畏まって跪いた。

「今しがた首都のエスコルピオより伝令が。どうやら大神官リブラが聖女召喚に成功したようです」

「……………………」

「獅子王陛下?」

「ああ。聞いている。それでオレにどうしろと?」

仰々しく装飾された椅子に不貞腐れて腰かけると、困ったような顔をしたロシュと目があった。
< 41 / 238 >

この作品をシェア

pagetop