人生の続きを聖女として始めます
さぁな、とオレは天井を仰いだ。
エルナダを、豊かな国のままレーヴェに譲る……それが出来れば一番いい。
だが、それは出来ない。
あの日、あの場所で、全てを滅ぼすと誓った時から世界はオレの敵なのだ。

「まぁ、それはさておき……エスコルピオへの指示は?」

また深くため息をつき、ロシュは王都からの手紙をヒラヒラさせた。

「ああ、聖女か?……そうだな……」

ラシャークのふざけた予言がまさか本当になるとは。
全く信じていなかったが、聖女を妄信する神官達の執念か怨念か、結果成功させるなんて強ち宗教もバカに出来ないな。
だがこれで、わかったことが一つある。
聖女が来たということは、世界は破滅に向かっている、ということだろう。
これは朗報だな。
後は、早々にバートラムを見つけ、然るべき罰をこのオレの手で与える。
それで全て終わりに出来るだろう。

怒りに荒れていた感情が少しだけ凪いだ。
そして機嫌を良くしたオレは、ロシュに言い渡した。

「聖女は殺せ、必要ない」

ロシュは一度大きく目を見開くと、いつものように長くため息をついて頷いた。
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