嫁入り契約~御曹司は新妻を独占したい~
「そうか、事情はわかったが……家族のためとはいえ、副業は歓迎できない」
「え!」


お、落としどころは……⁉︎

と、前傾の姿勢になって喉まで出かかった言葉を、なんとかグッと飲み込んだとき。


「善処しよう」


短く一言、薫社長はそう言った。


「は、はあ……恐縮です……」


善処の内容がどんなものか一切わからないまま、私は曖昧に一礼した。

特例として、許してくれるのだろうか……?

夜も遅いというで、私はそのまま高級外車に乗せられ駅で降ろしてもらうことになった。
今更だけど高級車の乗り心地は抜群で、後部も広いから足を伸ばしても余裕だし、連日のバイトで疲れているから楽な体勢になるとついリラックスしてしまう。

背もたれに身を委ねると不規則な車体の揺れも波に乗ってるみたいで気持ちよくて、ついうっかり瞼が落ちそうになった。
油断すると重たい頭が櫻葉社長のそばにくらりと傾いてたりして、私は道中何度もハッとして気を引き締めた。

最寄り駅に着き、ロータリーで停車した。


「あの、ありがとうございました」


長瀬さんが外側からドアを開けてくれて、降りようとしたとき。


「これは社長としてではなくひとりの男としてだけど。もっと、警戒心を持った方がいいよ」
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