嫁入り契約~御曹司は新妻を独占したい~
「さ、こっちだ。俺は先にハウスの方を見さしてもらってたんだけどね」
「……はあ……」


頭上に疑問符を並べ、私はログハウスに向かい歩み寄る。
長瀬さんが先導してドアを開けた。


「どうぞ、お入りください」


お入りください、ってここ、彩月さんの家なんだよね?
私は訝りながら、恐る恐る足を踏み入れる。

ログハウスの中は、白熱灯の温もりのある光に包まれた、素敵な空間だった。
中央に一枚板で作ったテーブルと丸太の椅子が置いてある。

薫さんと彩月さんのツーショットを見せられるのは、今でも結構辛いだろうなと、前もって心に予防線を張っておく。

けれども、そこにいたのは長袖の生成りのシャツにカーキのズボンという、これまで見たことないようなラフな格好をした薫さん、ひとりだった。


「社長、茅部さんをお連れしました」


私を一目見て、スクッと立ち上がる。
もったいぶるように一度躊躇ってから口を開いた。


「遠いところ、わざわざ悪かったね」


少し伸びた前髪を揺らし、顔を覗き込むように私を見つめる。


「い、いえ……」


低く響く、耳心地いい声を聞いただけで、そんな風に眉を下げて視線を絡められただけで、心の中がざわざわして、掴まれたみたいにきゅんとして、なんだか鼻の奥がつんとしてくる。

蓋をしたはずの気持ちが、溢れそうになってしまう。


「あの、どうしてここに……?」


私は室内を見回した。
彩月さんはどこだろう?
なるべくここには、あまり長居したくない。
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