嫁入り契約~御曹司は新妻を独占したい~
「その前に、はっきりさせておきたいんだけど、」
私と薫さんの間に割り込んだ芳樹社長は、高い天井に届くくらい声を張り上げた。
「じいちゃんの遺言の件」
薫さんは片方の眉をピクリと釣り上げた。
不穏な空気が流れる。
「俺は、まだ身を固めるつもりはないから。お前は俺に先を越されたくなくて、結婚を焦る必要はないぞ」
腕を組んだ芳樹社長は、緊迫感を打ち消すように僅かに頬を緩めた。
「あ、そう」
さして興味のない調子で、薫さんが呟く。
泰然としている芳樹社長に比べたら、どこか虚ろで掴みどころのない表情で。
けれども次の瞬間、その表情が一変した。
「だから、もう一華ちゃんを解放してあげたら? 執着してないでさ」
その芳樹社長の言葉に、薫さんの目の色が変わる。凍てつかせるような冷たく鋭い目で、芳樹社長を睨み見た。
「黙れ」
低音で響いた薫さんの声に、芳樹社長の顔にも緊張感が走ったように見えた。整った表情を硬直させ、間合いを詰めて対峙する薫さんを真っ直ぐに見つめて言った。
「お前がトップになったら、先が思いやられるな」
「なんだって?」
「そんなに自分本位だと社員がついてこないぞ」
芳樹社長が語気を強める。
こんなときにものすごく不謹慎かもしれないんだけど、整った容姿の美しい顔をしたふたりが向かい合っている姿は、すごく迫力がある。
「奔放すぎて自分本位なのは兄さんの方だろ」
薫さんは憮然とした態度で言った。
ど、どうしよう……。
ただの兄弟喧嘩って雰囲気じゃない……。
焦燥に駆られたとき、芳樹社長がふっと頬を弛緩させた。
私と薫さんの間に割り込んだ芳樹社長は、高い天井に届くくらい声を張り上げた。
「じいちゃんの遺言の件」
薫さんは片方の眉をピクリと釣り上げた。
不穏な空気が流れる。
「俺は、まだ身を固めるつもりはないから。お前は俺に先を越されたくなくて、結婚を焦る必要はないぞ」
腕を組んだ芳樹社長は、緊迫感を打ち消すように僅かに頬を緩めた。
「あ、そう」
さして興味のない調子で、薫さんが呟く。
泰然としている芳樹社長に比べたら、どこか虚ろで掴みどころのない表情で。
けれども次の瞬間、その表情が一変した。
「だから、もう一華ちゃんを解放してあげたら? 執着してないでさ」
その芳樹社長の言葉に、薫さんの目の色が変わる。凍てつかせるような冷たく鋭い目で、芳樹社長を睨み見た。
「黙れ」
低音で響いた薫さんの声に、芳樹社長の顔にも緊張感が走ったように見えた。整った表情を硬直させ、間合いを詰めて対峙する薫さんを真っ直ぐに見つめて言った。
「お前がトップになったら、先が思いやられるな」
「なんだって?」
「そんなに自分本位だと社員がついてこないぞ」
芳樹社長が語気を強める。
こんなときにものすごく不謹慎かもしれないんだけど、整った容姿の美しい顔をしたふたりが向かい合っている姿は、すごく迫力がある。
「奔放すぎて自分本位なのは兄さんの方だろ」
薫さんは憮然とした態度で言った。
ど、どうしよう……。
ただの兄弟喧嘩って雰囲気じゃない……。
焦燥に駆られたとき、芳樹社長がふっと頬を弛緩させた。